そう言えば、つい先日の春ののどかさに庭を見渡せば、木蓮にあたる陽光が厳冬期の弱々しい光とは違って、何か明るい春の到来を賛歌している生き生きとした陽炎までも感じるような勢いを感じさせました。
毎年、この頃になると決まって感じる春の光の明るさなのです。何か冬の太陽光とは違って、春だぞーと鐘を鳴らしてでもいるような輝きを感じてしまうのです。
確かに真冬の弱々しい、輝いていても寒さにさらされた太陽の光とは違って、燃えるような陽炎を感じる光の洪水です。
いったいこれは何なんだろうと不思議な感覚を覚えます。
真冬の太陽の軌跡はずっと南に寄っているので、角度も違うでしょう。そうすると、太陽光が大気を通過する厚みも違って来る筈です。従って大気での光の吸収量も違ってくるでしょう。吸収のスペクトル特性を見れば、冬のスペクトル分布は春の分布に比べて長波長側が伸びていて、青の吸収が多いのではないか、そのため春は冬より青み増して力強く感じられるのではないかと考えたのです。
企業の照明研究所にいた頃、部下に大気の吸収スペクトル特性を調べさせたことがありました。太陽光の波長分布特性の季節による分布特性差です。しかし、残念ながらその有意差は認められませんでした。
写真の趣味の方はご存知のように、色温度というものがあります。黒体放射の色と対比したときの黒体の温度をもって色温度とするもので、通常はケルビン温度で表わされます。
色温度は高いほど波長が短いほうによりますが、この冬の太陽光に対して春になると太陽光の色温度も気温に比例して高くなると考えてはいけないのでしょうか。
この辺になるとどうも私の知識の未熟さを暴露するのですが、どう考えても春の陽光のまぶしさは何か冬とは違った明るさと暖かさを感じさせます。猛烈な黄砂が日本列島を襲い、一昨日は日本中が黄砂で視界も効かない酷い状況でしたが、この黄砂が去った今日は本当に春を感じる暖かな陽光です。
散歩をしていると、家々の庭の木蓮かコブシが真っ白な花を咲かせています。私には残念ながらコブシなのか木蓮なのか解かりません。私の解かるのはせいぜい桜ともみじとチューリップとひまわりくらいです。しかし、この春を満喫する花々の美しさを見るにつけ、春の陽光の不思議さを感じずには居られません。
梶原孝生