私の友人が60歳を超えて、バイクのツーリングに夢中になっています。レーシングスーツに身を包み、郊外を疾走する時に全身にダイレクトに伝わるエンジン振動、風を切って走る爽快感・・・等々を言っています。
多くのバイクのエンジン音と排気音は「騒音」としか思えないのですが、ハーレーダビットソンの低く響く排気音は動画投稿サイトで検索すると山ほどヒットします。
実はハーレーの排気音はUSPTO(米国特許商標庁)に商標登録されています。
日本の商標法では登録が可能なのは「文字」「図形」「記号」や「立体的な形状(最近ではヤクルトの容器や「かに道楽」の動く看板が登録された)」などに限られていますが、米国、イギリス、ドイツ、フランスでは「音」が商標(サウンドロゴ)として登録できます。
日本でも使われている「♪ポーン ピポンパンポン♪」というインテルのCM音は、我々にもなじみがあると思いますが、これも海外では商標として登録されています。
色彩についても欧米では商標登録の対象であり、有名な「ティファニー・ブルー」は独占権が認められています。(下図)
こうした視覚や聴覚に関する新たな商標権は世界的に企業ブランドを商品やサービスに盛り込めるほか、コピー商品を排除する抑止力としても有効に機能する効果があります。
フランスでは偽造品が多い香水の「香り」も商標として登録しようという動きがありますが、今はボトルの形状までが商標登録の対象になっています。
特許出願が先行技術調査や明細書の作成など多くの労力と費用が必要な割には最大25年間の権利期間に対して、商標登録はそのものズバリですから調査も手続も比較的容易で、しかも登録料(登録のための法定費用は37600円x区分数)を支払い、10年ごとに継続手続き(法定費用は10年分で48500円x区分数)をすると半永久的に独占的に権利が守られます。
このように企業のブランドや商品のイメージを代表する商標権を日本でも拡大する方針が決まりました。特許庁は「動き」「ホログラム」「輪郭のない色彩」「音」などの登録が可能になる商標法改正案を今の通常国会に提出し、2014年の施行を目指しています。
1年前にはアップル社のiPadの商標権問題で、アップルは中国企業に48億円の和解金を支払ったと報道され、商標権の重要性が改めて話題になりました。
独自のブランドを育てたい企業さんは弁理士事務所や発明協会と相談し、拡大される商標権をビジネスに生かす、またはビジネスを守る取り組みが必要と思われます。 坂井公一