2014年3月31日月曜日

デンドライト

 デンドライトは樹枝状晶とも呼ばれ、あたかも枝が伸びたような結晶のことをいいます。北国の寒い日に窓ガラスに見られる氷の結晶も木の枝のような形をしているのはよく知られています。

 水は常温では液状で低温に冷却してはじめて固体になりますが金属は高温に加熱されて、はじめて液体となるため、溶けた金属を目にする機会は多くありませんが、金属も液体から固体になる際に芸術的といえるような結晶が生成しているのです。その一つにデンドライト状の結晶成長があります。
 一般の金属は複数の元素が混合されたり、不純物元素が含まれていて、液体状に溶けているときには均一に混ざっていても、凝固の際には純度の高い金属が優先的に結晶として固体になる性質を持っています。このときに結晶の成長に伴い液層の界面では他の成分が排出濃化され、成分分布と温度分布が複雑な関係になり、結果として結晶化しやすい方向に直線的に結晶が成長し、時には枝分かれして樹枝状のデンドライトが形成されます。このため冷却速度が異なるとデンドライトの形態も変化していきます。
写真は溶融温度が低いカドミウム溶液中で結晶成長させたアルミニウムのデンドライト組織です。
アルミニウムの結晶(凝固速度:速)
冷却速度が速い場合と、遅い場合に比べて、結晶の先端の形状が変化します。ゆっくりとした結晶成長では、はっきりとした結晶面(ファセットと呼ばれます)が形成され、芸術品のような形状を呈します。
アルミニウムの結晶(凝固速度:中)

アルミニウムの結晶(凝固速度:遅)

筆者がカナダ・トロント大学の研究生の頃の研究です(1975)。(指導教授:John W Rutter)
                             三浦 實

2014年3月2日日曜日

松下幸之助語録(3)

1、 血の小便

  私が現役の時代、世の中はカラーTVが大きく普及し、電気業界や販売店なども含めて、カラーTVに代わる次の大型商品に期待が集まりました。カラーTVに代わる大型商品は何かと関係者のみならずメディアも含めて、カラーポストは?ポストカラーは?などと世間では声高に叫ばれ、VTRが注目されました。
 VTRの開発を担当していた私達は試作品が完成し社長にお見せするために松下(現パナソニック)本社2階の役員会議室でセッティングして待っていると、突然松下幸之助創業者がふらりと入ってこられ「これいくらで売るのか」と質問されました、以後2,3の質問され製品についてのご自分のお考えを述べられました。その中で技術的に難しいなどと私らが否定的な答えをすると「君ら“血の小便”が出るまでやったか」と厳しく叱責されました。

 この言葉はまた、別の方からも聞かされました。当時副社長技術本部長の直括の特別研究室でVTRの開発を担当していました。常に新しいアイデアを要求される場面がありますが、なかなかいいアイデアが出てきません。副社長にこの案で進めさせてくださいと報告しますと「藪野君、“血の小便”が出るほど考えたのか」と追及されたことがあります。多分副社長も若い頃、創業者の松下幸之助さんからこの言葉で指導されたのだと思われます。

松下幸之助創業者と当時の中尾副社長

2、 物(ぶつ)が語りかけてくる

 当時VTRは注目の製品であったので、創業者の松下幸之助さんもたえず開発の進捗状況を気にしておられたのだと思います。秘書を通じて再々報告を求められたので、本社の創業者の居室や西宮の本宅にまでも試作品などを持ち込んでお見せして報告に伺ったことがあります。その際には必ず私達には教訓というか物の見方をお教えいただきました、ここに紹介するのもその一例です。
「君な、物というもんは、じっとこう前において一時間ほどにらめっこしておったら、こうしてくれ、こんなにしてくれと言いよるもんや」「君ら屁理屈ばかり言ってるけど、言うだけやなしに実際にやらないかんのやで、自分の一所懸命につくったものを抱いて寝るくらいの情熱をもって見とったら、それは必ず何かを訴えよる。ここをもう少し丸くせよ、もう少し小さくしたら、軽くしたらと品物が教えてくれるで。そのようにならんといい物は出来んで」と厳しく言われました。         藪野 嘉雄