2013年6月23日日曜日

「歯」について想うこと ~ その3「抜いた歯に感謝」 ~


<前回からの続き>

 さて、結局私は 悩んだ結果、3本まとめて歯を抜きました。
 「先生、今抜いていただいた歯は、持ち帰りたいので、よろしくお願いします」
 「承知しました。時々、持ち帰られる方がおられます。貴方はどうしてですか?」
 「私は これまで歯医者さんに歯を抜いてもらった後 その歯を見て“畜生!これが私を痛みで苦しめてきた奴か!”と恨みの思いを込めて ゴミ扱いで投棄してきました。

 ところが 先日の 先生のお話を聞き 少し考えを改めました。今日抜いてもらった歯は 私が生まれてから今日まで、私と喜怒哀楽を共にしてきたのです、私が子供のころに“身体髪膚これを父母に受く”という教えを受けました。すでに私の父母は亡くなりましたが、この歯は父母から授かって、胎児のときも含めると80年近く私の体の一部として、悔しいときには歯を食いしばり、嬉しいときには大口を開け大笑いしてきました。毎日3度3度の食事の時には、ご馳走のときも 粗食のときも 五味(酸い、苦い、甘い、辛い、鹹い)を共に味わってきました。
 昨夜はこの歯にとっての“最後の晩餐”というわけで、久しぶりの中華料理をいただき別れを惜しみました。」
 「私の話で、そこまで考えていただくとは、思っていませんでした。有難うございます。私も職業柄、歯についての思い入れでは 人後に落ちないつもりですが、貴方の歯に対する優しさには 敬服しました。」

 抜歯の翌日 傷口の消毒に行きました。その時アシスタントの女性から 
「昨日持ち帰られた歯は どうされましたか」と尋ねられました。
「ジュエリーボックスに処置した日付と感謝のメモ書きを付けて入れました」
「あら 素晴らしい 歯は喜んでることでしょうね」

 私は子供の頃 乳歯が抜けた時に 下の歯は屋根の上に 上の歯は床下へ捨てるように言われ、そのように守っていたこと思い出しました。理由を聞いた覚えがないのですが、察するところ 前の歯(抜けた乳歯)に向かって真っ直ぐ生えてくることを願ったオマジナイの様なものなのでしょうか? 皆様はどのようにされたのでしょうか。

 さて、私の歯科通いは これからも続くことになります。ところが、どうやら下の前歯4本(下の奥歯はすべて抜いてしまいました)だけでは下の入れ歯を支えるのが限界で、人前で話をするには問題があるようです(ある種の発音をするときや 何か不快さを舌が感じた時に反射的に舌で入れ歯を突き上げる動きをするために、入れ歯が簡単に外れ 発音が乱れることになるらしい・・・絶望!!!)。
 しかし、問題解決の方策があるようです。即ち、“インプラント”で、1~2本奥歯を造ることです。でも健康保険が利かないらしい。(なぜか健康保険が利く方法では、これに代わるものはないそうです。でも、その話は歯を抜く前には聞かされていませんでした。)
 私の友人にもインプラントした人がいますが、それほど特別でもない治療なのに、保険外とは・・・怪しからん!。いざという時に役に立たない健康保険であることよ。
 残念ながら 相当高額の健康保険外(10割負担)の治療となります。 (おわり) 
                                                                                            田村順造