2014年2月2日日曜日

松下幸之助語録(2)

不況またよし、松下幸之助・不況克服の心得十か条


第1条「不況またよし」

  不況、困難に直面して、ただ“困った、困った”と考えてはいないでしょうか。不況を後退につながる忌まわしいものと受け取るか、発展への好機と捉えるか、経営者としては“不況もまたよし、不況こそ改善・発展のチャンス”と考える。そうした前向きの発想からこそ、新たな発展への道も拓けてくるのです。

第2条「原点に返る」

  “この事業は何のために、いかに行うのか”という基本方針、経営理念を忘れてはいないでしょうか。問題が続出し、ともすればその厳しさに流されて、判断を誤りやすい不況時。そういう時にこそ、改めて原点に返ってみる。基本の方針に照らしてみる。そこから正しい判断も生まれ、断固とした不況克服の勇気と力が湧いてきます。

第3条「自らを点検する」

  自分なり会社の現状をよく点検し、正しい自己評価を得ることに努めているでしょうか。経営者に慢心があって、正しい自己評価を欠いたために、破綻を招くことが極めて多いものです。とくに不況時は、一歩誤れば命取りにもなりかねない“危機存亡の秋(とき)”。平時にもまして、冷静で念入りな自己反省、点検が欠かせません。

第4条「不退転の覚悟を」

  いざという難局に直面して、わが身を挺してぶつかっていく覚悟を持っているでしょうか。退くことは許されない。何としてもこの難局を突破するのだという経営者の強い執念と勇気、それが部下の意欲をも高め、思いがけない大きな力を生みます。不況、困難を飛躍、発展の好機に変える大きな原動力、それは経営者の不退転の覚悟から生まれてくるのです。

第5条「慣習を打ち破る」

  旧来の慣習に囚われていないでしょうか。非常時といえる不況期は、過去の経験則だけでものを考え行動しても、すんなりとうまくはいきません。“万策尽きた”という前に、これまで当然のこととしてきた慣習や商売の仕方を一度徹底的に見直してみる。そこから抜本的な改革も可能となり、打開の道もひらけてきます。

第6条「一服して待つ」

  あせって無理や無茶をしていないでしょうか。売り上げや仕事を確保することにとらわれて、無理な注文でも引き受けたり、極端な値引きの要求に応じたりしては深みにはまるばかり。不況の時には無理をせず、力を養おうと考えて、ちょっと一服することもまた必要です。そう腹を据えれば、痛手も少なく不況を乗り切ることもできるでしょう。

第7条「為すべきを為す」

  常に“何をなすべきか”
を考え、着実に手を打っていく努力をしているでしょうか。好況の時には、ともすれば気がゆるみ、あるいは忙しさにとりまぎれ、為すべきことを怠りがちなもの。不況時に倒産した要因の多くが、好況時につくられることを考えれば、いつ不況が来ても慌てずにすむように、日頃から為すべきことを為していくことが重要です。

第8条「ダムづくりの薦め」

  “ダムをつくろう”という意識を強く持って日々の経営に当たっているでしょうか。技術や人材、資金に設備、在庫、企画等々、“ダム”という考え方に基づいた余裕、ゆとりは、いわば経営の安定的発展を保証する保険料。不況に対してビクともしない企業体質を生むためにムダを除いてダムをつくらなければなりません。

第9条「打てば響く組織に」

  組織内の風通しが悪くなっていないでしょうか。良い情報も悪い情報も社員からどんどんあがってくる組織。外部の環境の変化に対する敏感な対応は、そのような活力ある組織から生まれてきます。不況に直面しても困らないために、好況時にも経営者は日々組織を風通しの良い状態に保つ努力を重ねることが肝要です。

第10条「責任は我にあり」

   業績が低下し、利益が上がらないのを不況のせいにしてはないでしょうか。どんな場合でも、やり方いかんで発展の道はあるものです。不況時の経営悪化とはいえ、それはやはり自らのやり方に当を得ないところがあると考えるべきでしょう。企業は社会の安定した発展のため経営者には“責任は我にあり”の姿勢が強く求められます。
                                                                                      藪野 嘉雄